レイターアルム

アットホームなスパ

 レイターアルム今回はヨーロッパの温浴施設の中でも、ちょっと変わった施設をご紹介します。南ドイツの国境近くにあるレイターアルム(REITER ALM)です。

 オーストリアザルツブルグから車で約30分の場所にあります。レイターアルムは、ホテルと温浴とスパトリートメント、サウナトリートメントが複合的に一体化しています。施設は丘の上に大きな別荘風に立っています(写真1)。駐車場に車を止めると右手にホテル、正面に本館があります。受付に行くと先にあるホテルにチェックインして客室に荷物を入れるように促されます。部屋に行くとすべて木づくりのチロル風の部屋です。これぞアルプスの民宿といった感があります。ベッドも天蓋付でとても雰囲気がいいです(写真2)。

チロル風の外観
写真1 レイターアルム外観
アットホームな内装
写真2 アットホームな内装

 部屋に荷物を置いて本館へと戻ります。本館に入ると広々としたロビーがありお茶の水博士のような人形が我々を向かえてくれます(写真3)。ロビーにはエッセンシャルオイルの抽出のマシン(写真4)が置かれており、またここで製造されている様々なテラピ用の化粧品が展示されています。一般の化粧品というよりはトリートメントマテリアルが中心です。スクラブ用の塩であったりオイルに浸したネットの中に塩が入っていてそれを用いてスクラブにするものや、海藻と塩をフリーズドライにしてあるものなど様々です。マッサージオイルなども色々種類があります。

お茶の水博士?のような人形
写真3 お茶の水博士?
エッセンシャルオイル抽出機
写真4 エッセンシャルオイル抽出機

ジェントルマンになる前に

 再び受付に行くとどのコースを受けますか?と問われます。ここでは温浴を使いながら様々なテラピやトリートメントを受けるというシステムになっています。それもこの施設や部屋が入り混じった形で構成されています。私はジェントルマンハッピーデイというコースを選びました。泥パック、カイザーバード(黄金バス)、ピンダトリートメントにディナーが付いて、そして温浴使い放題というコースです。バスローブとタオルを受け取り、シャワーを浴びて2階へ上がります。2階は中東地中海風のイメージです(写真5)。ドイツではこうした地中海風のデザインが好まれているようです。施設は巨大ではなく一度に100人前後が使うといった感じの大きさです。

東地中海風
写真5 2階の内装
ハマムマッサージ
写真6 ハマムマッサージ

 2階に入ってすぐのところにハマムマッサージ(アカスリ)のベッド(写真6)があります。これももちろん中東風のインテリアです。その対面には砂漠をイメージした部屋があります。その部屋は砂漠での一日を約30分で体験できるもので、温かい砂の上に寝そべると朝から夕方までの光浴の体験ができます。ほの温かい砂、日の移ろい、波、環境音楽でとても癒されます。その先には休憩コーナーがありその奥にはドライサウナがあります。このサウナもとても雰囲気があり水車の付いた山小屋風のしつらえとなっています。

 その前にはシュタインバードというちょっと変わった中温サウナがあります(写真7)。中央に大きな水釜があり、その横にはバーナーで熱し続けられているか籠に入った石があります。石が十分に熱せられると石の入った籠は自動的に水釜のまま中に入水していきます。入水すると瞬時にジャーッ、と音がして水から強烈な水蒸気が上がります。室温は60℃くらいなのですが、水蒸気が上がると同時に熱波が全身に伝わり一気に発汗します。これぞ、本場ドイツのアウフグースです。

本場ドイツのアウフグースを楽しめるシュタインバード
写真7 シュタインバード
黄金風呂 カイザーバード
写真8 カイザーバード

 その横にはカイザーバード(黄金バス)があります(写真8)。この豪華なお風呂は二人でも使えます。色々な入浴剤を入れてトリートメントに使います。さらにその奥に進んでいくと大型のトリートメントルームがあり(写真9)、泥パックバス、ピンダなどを行うトリートメントベッド3台、マッサージベッド2台が装備されています。また黄色の変わったFRPの浴槽があります(写真10)。浴槽が90℃直立できるようになっており、立ったまま浴槽の中に入ります。そのあと浴槽は横に寝かされます。そしてその浴槽の中にミネラル泥水が入れられ泥浴が始まるのです。なぜこんなことをするのか、ここでは詳しい説明は省きますが、とても合理的です。

各種トリートメントルーム
写真9 トリートメントルーム
風変わりなFRP製の浴槽
写真10 FRP製の浴槽

 次は中2階へ上がります。ここにはフェイシャルの部屋(写真11)、休息用デイベッド、泥パック室があります。

 次は本館からアネックスへと向かいます。低温でくつろげるサウナ(写真12)、そしてセルフで泥パックを行うラッスール浴室(写真13、14)があります。このラッスール浴は、大人の泥遊び的感覚があり美容のためだけではく、童心に帰って楽しめます。

ラッスール浴室
写真11 ラッスール浴室(1)
ラッスール浴室
写真12 ラッスール浴室(2)
フェイシャルルーム
写真13 フェイシャルルーム
低温サウナ
写真14 低温サウナ

 温浴はまだまだ続きます。

 中庭には屋外外気浴エリアが広がっています(写真15)。そこから中に入るとサウナコンプレックスです。5種のサウナ(写真16)と休息エリア、そしてバーもあります。いつまでも楽しめます。さらにジェントルマンハッピーデイのメニューをこなさなければなりません。ディナー付きで、まさに丸一日がかりです。

外気浴エリア
写真15 外気浴エリア
サウナ室内 どれも内装が凝っています
写真16 サウナ室内

泥だらけのジェントルマン

 さて、いよいよジェントルマンズハッピーデイのコースが始まります。ドイツ独特のタイムテーブルにのっとりサウナなどを使いながら順番が来るのを待ちます。シュタインバードに入ったりフィンランドサウナに入ったりしながら時間を過ごしているとスタッフが呼びにやって来ました。

 最初のメニューはカイザーバードです。黄金の大型浴槽に入ります。スタッフがバスクリンのような入浴剤を入れて、約20分の入浴です。黄金の浴槽はとても豪華でまさに王様気分ですが、1人では少しさびしく2人で入るくらいがちょうど良さそうでした。20分は結構長く十分すぎるほど。入浴剤の効果が身体に浸透したようです。カイザーバードを出るとまた休息したり砂漠の部屋に入ったりしながら時間を過ごします。

 またちょっと退屈したころに呼ばれます。

 今度は泥パックです。男性スタッフに促され裸になりベッドに横になります。スタッフが全身に泥を塗ってくれます(写真17)。そして全身をラップされます。すると、突然ベッドの床板が下がり始めました。そして温水の中につつまれていったのです。簡単に言いますと、ビニール袋に入って温水の中に浸かっている状態です。泥で全身をラップされているのですが、水中に浮かんでいるというとても不思議な状態です。泥パックしながら水中リラクセーションしているのです。そのまま眠ってしまいました。どのくらい経ったでしょうか、スタッフに起こされて水中に沈んでいる状態から床板が上昇して元のベッドに戻りました。ラップを取ってもらいシャワーコーナーで泥を洗い流しました。一皮向けたようで、気分爽快です。

泥パック
写真17 泥パック

 その後、またあちこちのサウナを使っていると呼ばれました。

 今度はピンダです。ピンダはアーユルベーダ療法の一つです。薬草(ハーブ)を布で包んでボール状になったピンダボールを用いて行います。ピンダボールを専用オイルで熱くし、それを全身にトントンと押し当てていきます。結構熱いです。何度か押し当てられているうちに冷めてきますが、また熱して熱々を押し当てられます。薬草の薬効と温熱の効果により、より健康になっていくというものです。終わったら全身ポカポカです。

 3つのテラピに様々なサウナ浴で、およそ5時間が過ぎていました。施設とプログラムを十分に堪能し、プログラムの最後はディナーです。正調ドイツ料理とワインをいただき身体も心も胃も大満足です。ゆっくり食事をとり、そしてチロル風のかわいらしいベッドで眠りにつきました。超健康的な一日が過ごせ、心も身体もリフレッシュしました。

著者:粟井英一郎