「湯」という文字を見て皆様方の頭の中に閃くものは何でしょう?
…「温泉」…「露天風呂」…「家族旅行」…「温泉饅頭」…等々…
温泉の発見は、大昔のこと…と思われますが、日本各地の温泉は古くから「ユ」と呼ばれていました。平安時代の代表的な辞書である「倭名抄」では温泉を「由」と呼び、また、同時代の全国の神社を列挙した「延喜式神名帳」には、温泉神社の温泉の文字に「ユ」の仮名がふられ、入浴のための小屋は「ユヤ」「湯屋」と記されています。
また、言語学者の新村出先生は、著書『風呂雑考』の中で、「湯」の語源は「斎(ゆ)」であり、「ユ」とはもともとは沐浴などによって身体の汚れを除き、心身を清潔に保つこと、すなわち「潔斎の意味を持つ」と書いておられます。
更に、亡くなった方を納棺する前に清めることを湯灌と呼ぶことも、古い時代「斎川浴(ゆかわあみ)」と呼ばれた潔斎の行為を語源としたもので、仏教が伝来した後、海や川、湖水、温泉などで行われた「禊(みそぎ)」や「沐浴」が、以後の時代の移り変わりの中で、日本の温泉文化の礎となったとのこと。
「では、世界の温泉文化は?」それは、『温泉物語』の玉手箱です。
チョン! チョン! チョン! (これは拍子木の音)
「民族と温泉との拘わりの歴史」それは日本だけのものではなく世界の国々に、それぞれ国の歴史を反映した『温泉物語』があります。どんな物語があるのか、玉手箱を開ける前に、地球上のどの辺りに、どの様に温泉が分布しているのか。
少し学術的なお話になって「ゴメンナサイ」ですが、チョットだけ お時間拝借です。
まずは「温泉と火山の関係」について……
どうぞ、次の2つの図をよ―――くご覧ください。
地球上には、「環太平洋造山帯」と、「地中海ヒマラヤ造山帯」の2つの大きな 造山帯があります。これらの地帯では、古い地質時代から繰り返して造山活動が起こり、それに伴って生じた断層や大きな地質構造線に沿って火山が噴出し火山帯を形づくっています。また、これらの地帯では大地震が発生する事が多いので一大地震帯ともなっています。
一方、地球上で温泉の多い所として知られている日本、イタリア、ニュージーランド、北アメリカのカリフォルニアなどは、いずれも上記火山帯の中にあり、アイスランド、ドイツ、フランスなどは、地中海火山帯の近く、又は延長線上と思われるところにあります。従って極めておおざっぱには、地球上の温泉の多い所を含む地帯、すなわち「温泉帯」は、「火山帯」「造山帯」「地質帯」と一致しているということができます。
ゴメンナサイ!理屈っぽい話ばかりが続いて…
(もう少し…もう少しのご辛抱を……)
世界活火山分布と世界の温泉分布を両図を比べて見ると、火山帯と温泉帯とが一致している所が多い…
…でもよくよく見ると、火山活動の知られていない所にも、かなりの数の温泉があることにお気づきになるでしょう。
例えば、シベリアのバイカル湖周辺から西方のノボシビルスク、オムスク、スウエドロフスクにかけての一帯、パミル高原、インド、中国、アフリカ南部、オーストラリア北東部などがその代表的な地域です。温泉現象は火山や地震と異なり、極めて局所的な現象であることから、世界的には、まだまだ世に知られていない温泉が多いのかもしれません。それに温泉に対する関心や認識度の違いも国によって大きな差があります。
従って、現在の段階では、同一基準のもとで『世界の温泉分布』を正確に知ることは……残念ながら……
ムズカシイ…のかなぁー?
むしろ…
イタリアを中心とした古代ローマ帝国の領土や日本及びその周辺に多くの温泉が知られているという事実は、そこに、温泉に多大な関心を持った民族が古くから住みついていたという事の結果……と考えることの方が現実的な思考…ということなのでしょうか?
日本は世界一の温泉大国です。その事、みなさんご存知でしたか?
いや、温泉天国だろう? ハイ!
著者:宇津木元