ドイツ・ケルンには、「クラウディウステルメ」をはじめ、いくつもの大きなテルメがあります。ケルンから電車で約1時間ベルギーとの国境近くの町、アーヘンに「カロルステルメ」があります。
アーヘンは古代ローマの時代から温泉保養地として知られています。そしてアーヘンにはケルン大聖堂と同じくアーヘン大聖堂があり世界遺産に登録されています。786年に建設が開始され増築がなされ今日に至っています。ガラスの礼拝堂のステンドグラスの美しさは、目を見張るものがあります(写真1)。
アーヘンの街並みはこの大聖堂のまわりに広がっています。ドイツの小都市でよく見られているように、車の通らない石畳のショッピングストリートがとても美しく印象的です。
ホテルにチェックインして荷物をおいて早速目的のカロルステルメへ向かいます。外観はケルンのクラウディウステルメとバーデンバーデンのカラカラテルメをミックスしたような印象です。この二つのテルメは古典やポストモダンを美しく表現している建物でその両者の良さをうまく取り入れているかのようです。
早速、中に入ります。
エントランスは緑が多く配されしっとりと落ち着いた空間です。正面に受付カウンターがあり、右に進んで行きます。まずインドアプールエリアに出ます。3階分吹きぬけている大空間とそれを支える列柱が強烈なインパクトをかもし出しています(写真2)。力強さと美しさがあります。中央の円形のプールはバーデンバーデンのプールと同じく34~5℃の不感温度の温泉プールです。ドイツの人達は何と言ってもこの温度の温水が大好きです。熱くもなく寒くもないこの温度はずーっと水の中で漂っているには最適な温度なのです。ドイツのこうした施設で40 度以上の浴槽を見かけることはまずありません。サウナで熱いのは大丈夫でも温泉の熱いのはちょっと苦手のようです。
その周りには休息エリア、バブルプール、ジェットプール、洞窟プール、スティームサウナ、歩行浴プールなど、これでもか、というほどアイテム三昧です。今度は屋外エリアに出ます。ここの屋外エリアは、件の円形屋内プールを中心に両方にあります。
一方はアトラクションを中心として、流水、バブル、寝湯など楽しさ満載のプール(写真3)。もう一方は、長方形のプールで水中運動やリハビリ用のプールとなっています。1階に広がるプールエリアを一周するだけでゆうに1時間はかかります。あまりに建物が力強く本格的な建物なので、人が負けそうになるくらいです。泳いだり、温泉に入ったりするのにこんなに立派だと少々気後れしてしまいます(写真4)。
続いてサウナエリアへ行きます。長い長い直線の階段を上っていくとサウナワールドの始まりです。サウナワールドも2つのエリアに分かれています。ひとつは屋内サウナエリアでオリエンタルワールド、もう一つは屋外サウナエリアでバルチックワールドです。
屋内サウナエリア、オリエンタルワールドに入ります。中央には、2階吹き抜けている円形のヒーリングプールがあります(写真5)。それを取り巻くように、テピダリウム(38℃)、オスマンバス(45℃)、ハマム(45℃)、アイスルーム、温冷交互浴エリアがあります。オリエンタルワールドと名づけられている通り、中東のイメージがうまく表現されており神秘的な魅力があり不思議なリラックス感があります。どの部屋も少し温度がぬるめでゆったりと長く過ごすような温度設定となっています。一日中ここで退廃的な気分で過ごせそうです。水タバコやトルコティーなんかあれば、気分はもうアラビアンナイトです。
続いて屋外サウナエリア、バルチックサウナワールドに行きます。冷たい飛び石を歩き屋外サウナへと急ぎます。こちらの人はこうした施設へ来館する時は必ずマイローブとマイビーチサンダルを持参するのが常識なのですが、今回はビーチサンダルを忘れたので足が冷たいです。
サウナは水に浮かぶ高温のアウフグースサウナ(写真6、7)、中温のアロマサウナ、低温のカラーサウナ、トロッコ洞窟サウナ、足湯エリア、暖炉室、シャワーエリアと続きます。もちろんどれも個性的で本格的です。日光浴と同時に大きな屋外ヒーリングプールがあり、サウナの後ゆっくりと身体を癒してくれます。基本的にドイツは男女混浴ですが女性専用サウナエリアもあります。
世界遺産から1000m足らずにこんなパラダイスがあるなんて、なんていい国なのでしょうか!
さらに「きままな世界」というエリアがあります。
ここではスパトリートメント、アクアトリートメント、キャラバンオアシスなどがあります。フェイシャルやボディトリートメントも多くのメニューがありますが、アクアトリートメントもたくさんの楽しそうなメニューがあります。絹の手袋を使ったピーリングとか、ソープマッサージ、「スルタンセレモニー」という名のピーリングやソープ、チョコレートを使ったマッサージや、「千夜一夜」トルコマッサージ、泥パックを行う「ラッスール」などメニューを見ているだけでも楽しいものです。
また、「キャラバンオアシス」(写真8)は、砂漠の一日を30分で体験できるプログラムです。クリーンで温かい白い砂の上に寝そべります。部屋の環境が夜から朝、昼、夕方と刻々と移り変わっていきます。光、香り、熱、香りを感じてリラクセーションとヒーリングするプログラムです。
このようにドイツのテルメにあるスパエリアは単にマッサージ等の人的サービスがあるだけではなく、スティームサウナの部屋を使った泥パックやキャラバンオアシス、サウナ室で行うアウフグースなど、ソフトとハードを合体させたプログラムが多種多様に行われています。このあたりは、日本でも見習いたいものです。これだけ数々の温泉プール。サウナ、スパ、プログラムがありますから、おのずと滞在時間も長くなります。ということでレストラン、カフェは3ヶ所もあり、いつでも飲食できます。
ベルギー国境近くの小さな都市で、こんなに大きく充実した温泉スパ施設があるなんて本当にうらやましいかぎりです。
著者:粟井英一郎